相手のショットに対応する「フットワーク/打つためのフットワーク」 [守備力の向上]
守備力を向上させるためには、”相手のショットに対応する力”を高めていかなくてはなりません。
ここまで、その実現のために非常に大切な項目である”判断”、”反応”、”スタート”について説明してきましたが、いかに、判断、反応、スタートが理想的なものであったとしても、肝心のフットワークに問題があれば、
守備力の向上など見込めないことは容易に想像のつくところです。
テニスのフットワークは、”スタート”の項目で説明したスプリットステップに始まり、相手のショットに追いつき打ち返すためのフットワーク、そして自分がショットを打った後の状況に応じて、自分が戻るべき場所へ戻るためのフットワーク、戻った場所で相手のショットを待つ間のフットワークの順序で行われます。
簡潔に表現すれば、スタートのためのフットワーク、打つためのフットワーク、戻るためのフットワーク、待つためのフットワークを、ラリーが続いている間、途切れることなく繰り返し行うということです。
いずれのフットワークも大変重要なもので、これらの内どれかひとつでも問題のあるものがあれば、守備力はそれに応じてレベルが下がると考えてよいでしょう。
前回の記事で、スタートのためのフットワークであるスプリットステップについては説明しましたので、今回の記事では、打つためのフットワークについて説明したいと思います。
打つためのフットワークについて、理想とされることは、速く、正確であり、重心のバランスが崩れないということです。
速くとは、走る際の左右の足の入れ替えが速いということではありません。
目標の位置へ素早く移動するということを意味します。
これについて重要な技術は走る際の歩幅の広さです。
例えば1秒で3歩移動したとしても、その1歩が30センチだとすれば、全体での移動距離は90センチです。
しかし、1秒で2歩しか移動できなかったとしても、その1歩が50センチだとすれば、移動距離は1メートルです。
当然、こちらのほうが素早く移動することができるということが判ると思います。
足の回転が速ければ速いフットワークというわけではないということを理解しなくてはいけません。
そんなことは当たり前のことだと軽く考えてはいけません。
広い歩幅というのはトレーニングを積まずにそう簡単に取れるものではないからです。
例えば、プロ選手は特に時間的な余裕の無い場合などに、ハーフコートを2歩で移動することがあります。
ハーフコートは4.115メートルですから、この1歩は約2メートルということになります。
この広い歩幅がプロ選手の守備力を支えているのですが、このことを知ったからといって、誰もが明日から
この歩幅で走れるかといえばそうではないですよね。
ショットを打つ練習だけでなく、広い歩幅で走るための練習も十分に積んでいないと良いフットワークは簡単には身につかないということが理解できると思います。
次に正確であるということについてですが、相手の打球に追いついたとしても、近づきすぎたとか、足りなかったとかでは、正確なショットで打ち返すことは難しくなってしまいます。
相手のショットに追いついたその場所から、自分が狙おうと思っているコースへ狙い通りの球種でショットを打つためには、それなりの正確なポジションが取れていることが必要です。
当然、正確な位置へ足をセットできないのであれば、いかに速く移動できたとしても、安定した守備にはつながらない結局意味の無いものになってしまいます。
ここで大切になることは、歩割りという技術です。
自分が正確なショットを打つために、その相手の打ったショットに対してどの地点へ足をセットしなければならないのかを相手のショットを見て確認した後、瞬時に判断し、その場所へ正確に到達するためには、何歩で、及び、どの程度の歩幅で移動しなければならないのかを感覚的に判断、及び、実際にそのように移動する技術です。
この技術が曖昧だと、いかに速いフットワークを持っていたとしても、ショットの成功確率はなかなか向上しないといって良いでしょう。
もちろん、常に歩割りを完璧にして、最高速で最適なフットワークが必要なわけではありません。
例えば、相手のショットのスピードが遅い場合や、自分がそのショットに対して移動する距離が短いなどの場合は、当然、フットワークに速度は求められませんので、およそのポジションに移動した後、相手のショットに対して細かく足を動かしてそれに対するポジションの微調整を行っても何の問題もありません。
もちろん、そのようなことをするだけの時間があればの話ですが。
問題となる場面は、相手のショットに追いついた時にはもう打ち返さなくてはいけないような、フットワークに速度を求められる場面です。
このような状況で、歩割りの技術力の差が守備力の差となると考えて下さい。
クレーコートやオムニコートであれば、多少でも時間的な余裕があれば最終的なポジションの微調整を足をスライドさせて行うことができますが、ハードコートなどではこの技術を用いることは難しいですから、自分が足をセットしたい場所へ最適な歩幅、歩数で移動できるように訓練を積まなくてはいけません。
例えば、コート上の様々な点から、サイドラインに向けて最高速で走り、サイドライン上に正確に足をセットするなどの練習を繰り返し行うことです。
これにより守備に限らず、攻撃をする際にも自分のショットが安定していくことを感じられるはずです。
そして次はバランスを崩さないということについてですが、これは、特に足場の悪いコートでのスタート時や、相手のショットに追いつきスイングを開始した時に、姿勢(重心のバランス)が崩れてしまったとしたら、それは大きなマイナスになるということです。
例えば、スタートの際にバランスを崩すと、地面を蹴りだす足裏が滑ってしまい、良いスタートは切れません。
また、相手のショットに追いついた際にバランスを崩していると、もちろん自分のショットも不安定になりますし、ショットを打った後すぐに次の動き(戻るフットワーク)に入ることができなくなります。
もしも、この時の自分のショットでエースを狙っているのであれば、ショットを打った後に戻る必要はないですから、ショットが不安定になる可能性に目をつぶれば問題にならないのかも知れませんが、もし、まだラリーが続くというような場面であれば、相手が次のショットを打つ前に、自分が最適なポジションへ戻れていないと、次のショットで仕留められてしまう可能性が出てきます。
テニスの試合中のラリーでは、常に、次の相手のショットに備えができていなければ、特にペースが上がれば守りきれるものではありません。
従って、打球時にバランスを崩してしまうということは、相手に対して付け入る隙を与えるという意味で、ミスにも近い行為です。
大抵の場合、相手はあなたがバランスを崩してショットを打つのを待っています。
以上のことをまとめると、打つためのフットワークに求められる技術とは、歩幅を広げること、歩割を正確にすること、姿勢良くバランスを崩さずに走り、打球後直ちに次の動きに入れるようにすることです。
これらの技術を体得するには訓練しかありません。
日々意識を持って取り組んで下さい。
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相手のショットに対応する「スタート/タイミング」 [守備力の向上]
理想のスタートのタイミングは、相手のボールがどこに来るのかが判断できたときです。
判断がついた瞬間にその方向へ動き出すことが大切です。
これは、相手がショットを打つ前に、その相手が打とうとするショットについての判断が可能であれば、その段階でスタートをしても良いということです。
予測の能力が高まれば、状況によってはそのようなことがたびたび起こりうるものです。
しかし、多くの場面では、相手がショットを打つ前にスタートすることは困難で、相手がショットを打つのを待ってスタートをすることになります。
もしもここで、スタートのタイミングが遅れてしまえば、その場面においての理想的なスタート位置を守り、良いスタートのフォームを身に着けていたとしても相手のショットに追いつかず、守備を失敗してしまう可能性があります。
そこで今回は、以下にスタートのタイミングについて注意をするべき点について説明をしたいと思います。
スタートのタイミングを早め、守備力を高めるために相手のショットの予測と判断が大切だということはこれまでの説明で理解されていると思います。
しかし、予測と判断が早く行われても、実際の動き出しが遅れてしまえば十分なポジションへ移動することは困難になってしまいます。
そこで、実際の動き出しを俊敏にするためには、相手の打球時に合わせスプリットステップを行うことが大切になります。
前回に説明をしたスタートのフォームについては、このスプリットステップの着地時でのことです。
しかし、ただ単にスプリットステップをすれば良いというわけではありません。
スプリットステップの際、その着地のタイミングについて十分に気をつけることができないと、効果は半減してしまいます。
通常、スタートをするためのスプリットステップは、筋反射のメカニズムを用いて、静止時からの動きに対し、より速い動き出しを可能にするために行われます。
この着地のタイミングが速すぎると、一度動きが止まってしまい筋反射がおこりません。
スプリットステップをする意味がなくなってしまいます。
また、タイミングが遅すぎると、ボールのコースが判断できているのに、スプリットステップの動作(着地)が終了しておらず空中にいることになりますからスタートが切れないということになってしまいます。
そこで、最も理想的な着地のタイミングは、相手のラケットにボールが当たる前にジャンプをするための動作に入り、当たった直後(当たると同時のつもりで良い)には着地するということになります。
また、スプリットステップは筋反射を使った、スタートのためのフットワークですから、スプリットステップで動きが終わるのではなく、スプリットステップで動きが始まるということを常に意識してください。
着地とともに動き出すことが大切です。
この点は特に重要です。
また、着地の際に膝が緩んでしまうと速いスタートはできません。
着地では”グニャ”ではなく、”タン”といったイメージです。
そして、相手がボールを打つタイミングは、常に変化させてくるということに注意をはらうことが大切です。
相手が攻撃をしかけてくるときには、あなたの打ったボールがバウンドした直後をライジングで打ってくるかも知れませんし、もう一歩前に出て、ドライブボレーなどで対応してくるかもしれません。
このような場合にのんびりと構えていると、スプリットステップのタイミングが遅れてしまい、結局守備を失敗してしまうといったことになりかねません。
常に相手の打球のタイミングに気を払い、相手の打球のタイミングにぴったりと合ったスプリットステップを取れるように訓練を積んでください。
ここまで説明したてきた、スタートの「位置」についてそれぞれの状況下で最適にすることができ、スタートの「フォーム」を理想的なものにして、スタートの「タイミング」が正確にとれるようになれば、守備力は劇的に向上するでしょう。
これにより0.1秒速く目的地につくことが出来れば、3m分の余裕が生まれるのですから。
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相手のショットに対応する「スタート/フォーム」 [守備力の向上]
スピードのあるスタートを切るためには、スタートでのフォームは大変重要です。
陸上競技の短距離の選手がスタートのフォームにこだわりを持っていることは周知の事実です。
短距離走は100分の1秒を争う競技ですからこれは当然のことだと思いますが、テニスの場合も前述したように0.1秒の遅れが致命傷になる俊敏性を問われる競技ですから、スタートのフォームには十分に気を配る必要があります。
高いレベルで試合をしたいのであれば、この部分について意識を持って訓練を積むことが大切です。
以下にスタートのフォームについて気をつけなければならない点として、膝の角度と、スタンスの広さについて説明します。
・膝の角度
スタートをするときには、もっとも力強く地面を蹴れる角度に膝を曲げておくべきです。
これは、スプリットステップの着地の際に、適切な角度に膝を曲げた状態で着地するということです。
スプリットステップは相手がボールを打つ瞬間に軽くジャンプをする動作のことですが、この着地の際に、膝の曲がりが少ないと十分に強く地面を蹴れませんから、このまま走り出そうとすれば、スタートでの一歩目が小さくなってしまいます。
また、膝が伸びた腰高の状態から大きなステップで走り出そうとするのであれば、そのままでは大きな一歩は踏み出せませんから、一度地面を強く蹴り出すために膝を曲げる必要があります。
当然のことですが膝を曲げるためにも時間が必要になりますから、このように、スタートをする時になって初めて膝を曲げるということでは、その膝を曲げるための時間がロスになります。
例えば、徒競走をするときには「位置について」の号令でスタートラインに立ち、その後「用意」で膝を曲げスタートのための準備をし、そして「ドン!」で走り出すことになります。
腰高の状態で着地しスタートすることは、「位置について」の状態から「用意」を飛ばしていきなり「ドン!」ということです。
これでは「ドン!」と言われてから膝を曲げてスタートをすることになり、走り出しが遅れてしまうことが解りますよね。
効率の良い理想のスタートをしたいのであれば、スタートの前に膝を曲げておくべきだということです。
前述したように時速100km程度のスピードボールは、0.1秒で3m程移動してしまうわけですから、スタートをしようと思ってから膝を曲げているようでは守備力が向上するわけがありません。
しかし、膝を曲げておくことが大切だからといって、膝を深く曲げすぎていると逆効果になることもあります。
自分自身の体重であっても重心が低くなれば持ち上げるのには大きな筋力を要します。
特に筋力の乏しい人では、時間と体力のロスになり、効率の良いスタートにはつながりません。
・スタンスの広さ
効率の良いスタートは、右に移動する際には右足のある場所から、左に移動する際には左足のある場所からです。
故に、スタートでのスタンスが広ければ、スタートの地点が移動する方向に近づくわけですから、それだけ有利になります。
例えば、センターマーク付近にいるときに、肩幅程度の狭いスタンスをとっていれば、せいぜいセンターマークから30cm程度の場所からスタートをすることになりますが、このときのスタンスが肩幅の2倍の広さであった場合はセンターマークから60cmの場所からスタートができるということになります。
これだけで30cmの距離を得することができるわけですから、スタンスは広く取るべきだということが理解できるでしょう。
しかし、広すぎるスタンスも逆効果になる可能性があります。
例えば、右側に走リ出すためには、右足の右外側へ重心を移動しなければなりません。
スタンスが広すぎると瞬時に重心を足の外側に出すことが困難になってしまいます。
また、この時、左足は地面を蹴って身体を右側へ押し出さなくてはいけませんが、スタンスが広すぎると地面をしっかりと押さえられずに強く蹴りだそうとすると滑ってしまう可能性もあります。
これでは速いスタートをすることはできません。
以上のことから導き出される理想のスタートフォームとは、膝の角度とスタンスの広さを適度に整えるということです。
もちろん、これを身に着けるためには、自分の筋力にとって、どの程度の膝の角度とスタンスの広さが最も適しているのかを色々試し、確認して訓練する必要があります。
また、前述しました足が滑るということに関しては、シューズとコートサーフェイスとの相性や、シューズのアウトソールの磨耗度合いも関係してきます。
プレーをするコートに合った、足底の溝がはっきりとした新しいシューズを履くように心がけることも大切です。
次回はスタートをする際の”タイミング”についての説明をしたいと思います。
相手のショットに対応する「スタート/位置」 [守備力の向上]
予測の能力が高まれば、多くの場面で、およそどこにボールが来るのかが判断できるようになると思います。
また、反応が速くなれば、守備だけではなく攻撃の際にも、相手が打ってきたボールに対してより理想的で正確な位置がとれる可能性が高まります。
これらの能力を向上させることは、テニスの上達にとって不可欠なものです。
しかし、いくら予測と反応が良くても、実際の行動(動き出し、スタート)が遅かったり、その効率が悪ければ、当然結果にはつながりません。
そこで、この項からは、理想のスタートを取るための重要な要素である”位置”、”フォーム”、”タイミング”について説明したいと思います。
まず今回はスタートをする際の”位置”についての説明です。
守備力を向上させるためには、相手の打球時に、コート上のどの位置からスタートをするのかが非常に大切です。
言い方を変えれば、相手がボールを打つ姿を、あなたがコートのどこで見ているかが重要なのです。
もしも、あなたがレベルの高い選手に対するとき、このスタート位置をミスすると、その隙をつかれて、崩されてしまったり、エースを決められてしまう可能性が高まります。
片側に偏った効率の悪い場所にいるようでは(これをポジションミスといいます。)、相手のボールのレベルが上がれば、守りきることは不可能です。
理想のスタート位置 = 守らなければいけない範囲のセンター
上記に対する理解の深さが、大きく守備レベルを左右します。
では、”守らなければいけない範囲のセンター”とはどこでしょうか。
試合の経験が少ない人は、シングルスコートの真ん中がセンターだと勘違いをして、センターマーク付近だと考えるかもしれませんが、正確にはそうではありません。
実際は、相手が打球時に居る場所によって、守らなければいけない範囲は常に変化しています。
コートの図を描いて、色々な点から、定規を用いて相手が打ってこれる右端と左端にむけて、線を引いてみてください。
その範囲のセンターが、常に変化することに気がつくでしょう。
(例えば、フォアサイドのコーナーからストレートとショートクロスに対して線を引いてみてください。この2本の線の中心はセンターマークの右側を通ることが理解できると思います。)
相手の打球時のポジションから、自分のコートのどこが守らなければいけない範囲のセンターになるのかを、間違えずに理解し、瞬時に感じ取ることが、相手に付け入られるオープンスペースを作らない、理想のスタートポジションを取れることに繋がります。
しかし、プロ選手のポジションを良く見ていただければわかると思いますが、試合中、常に定規で線を引いたような、”守らなければいけない範囲のセンター”からスタートしているわけではありません。
もちろん、ポジションミスや、配球のミスによってそうなってしまうこともありますが、通常は、守らなくてはいけない範囲とは、相手が打ってこれる可能性の高い範囲ですから、状況(相手の技術力、相手の配球の癖、カウント、作戦)によって、守らなくてはいけない範囲は違ってきます。
その相手の打って来そうな範囲を予測、判断して、最も効率よく戦えるスタート位置を取るようにしているのです。
例えば、相手のショットに対して自分のフットワークで守り切れると判断できる場合に敢て自分の得意なサイドを広く開けておき、そこへ相手のショットを誘い込みカウンター攻撃をする作戦や、深いクロスのボールに対してストレートに打ってこない相手に対してクロスよりのポジションをとることなどの作戦もよくあることです。
しかし、これが理解できるようになるまでには、相当の経験が必要です。
試合形式の練習や実際の試合の中で多くの経験を積み、データを頭に入れて行き、少しでも効率の良いスタート位置を取れるように訓練をしてください。
次回はスタートをする際の”フォーム”についての説明をしたいと思います。
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相手のショットに対応する「反応」 [守備力の向上]
今回は、”相手のショットに対応する力”を向上させるために必要な”反応”の大切さについて説明をしたいと思います。
・反応とは
通常テニスでの反応とは、相手のショットに対しての初動対応のことを指します。
反応が良いという場合は、相手のショットに対するスタートが速いとか、ボレーなどで相手のショットに対するラケットセットが速いことなどを示しています。
また、反応が正確というのは、例えばボレーなどの際、相手のショットの軌道に対してラケットをセットする場所が正確であることなどを言います。
・反応は2種類ある
テニスでの反応には、二通りのなされ方があります。
ひとつは、自分の判断によって行なわれるもの。
もうひとつは、熟練した動作によって判断を介さずに反射的や自動的に行なわれるものです。
人間の行動は筋肉が動くことによって行なわれます。
この筋肉は、脳からの電気信号によって動きます。
従って、どちらの反応も脳からの指令であることは間違いないのですが、実は、二つの反応に対して、指令を下す脳の部位が違うことが明らかになっています。
前者のほうは、脳の中の大脳と呼ばれる部位からの指令に対し、後者のほうは小脳と呼ばれる部位で指令が出されます。
大脳は主に、行動の効率化など運動を考えてコントロールして行なう際に使われる部位で、それに対し小脳は自動的に行なわれる動作を管理する部位です。
例えば、”もう少しテークバックを小さくしてみよう”などと考えて行動することは大脳を経由した運動であるのに対し、走る際に、”右足と左足を交互に出して...”などと考えず自動的に動けるのは小脳の働きによるものです。
熟練した動作に対しては、いちいち考えなくても行動できるように、時間を短縮する回路が私達に備わっているということです。
判断を介して行われる大脳を経由した反応は、認知して判断して行動するといった流れで行われます。
これは、判断をするための時間が必要になりますから、判断自体が遅れれば行動を始めることも遅くなります。
それに対して、判断を介さない小脳による反応は自動的に行われるもので、認知後直接行動をとることになります。
これは、判断をする時間が必要ないわけですから、認知後すぐに動き出すことができ反応時間を大幅に縮めることができます。
一流の指導者は”考える”のではなく、”感じる”ことが大切だといいます。
これは、この反応に対する時間を減少させるために非常に大切なことです。
しかし、感じて動けるようになるためには、相当の経験と訓練が必要なのは言うまでもありません。
また、誤解をしないようにしていただきたいのですが、自動的に行なわれていることとは、いわゆる”癖”ということです。
走るフォームひとつにしても、人それぞれ違っています。
そのフォームをより理想的なものへ近づけるためには、大脳を介してよく考えて身体(小脳)に覚えこませることが大切です。
これを覚えるまでは”考える”ことが何よりも大切です。
ここで、良くない癖を身につけてしまうと、常にその悪い癖が自動的に行なわれることになりますから注意してください。
・反応は速度と正確さが大切だ
テニスでの反応において大切なことは、その速さです。
反応が遅れてしまえば、打ち返せるはずのボールも打ち返せなくなります。
例えば相手のショットが時速100kmを超える速さで飛ぶ場合、およそ0.1秒の間にそのボールは3mほど進むことになります。
平均的な視覚による認知においての反応速度は0.2秒程度です。
聴覚についてはもう少し反応速度が速くなりますが、ピストルの音とともにスタートを切る陸上競技ではスタートの合図後0.1秒以下でスタートを切った選手はフライングとされます。
つまり現在は0.1秒以下で反応をすることは人間には不可能と考えられているということです。
従って、一流の陸上選手と同じぐらいのタイミングで反応したとしても、相手のボールは3mほどこちらに向かって来てしまっているということです。
もちろん平均的な0.2秒の反応速度であれば、空気抵抗などのショットの減速率を考えなければ、6mほど来てしまっていることになります。
テニスコートの縦の長さはおよそ24mです。
横の長さは10mを少し欠ける程度です。
一流のスポーツ選手の10m走の記録目安は1.7から2秒くらいです。
従って、0.1秒で3m進むボールが24m先に到達するには0.8秒かかり、テニスコートの真ん中から端までの約5mを走るには0.8秒以上かかるということになります。
実際には、ボールの速度は空気抵抗などにより減速しますし、バウンドによっても減速しますからこのように単純な話ではありませんが、反応が遅れれば守備することなど無理なことが良く理解できると思います。
また、反応の正確さも非常に大切です。
これは判断にもよるところだと思いますが、反応して走り出したつもりが逆方向だったり、ラケットのセットを間違えたりではしょうがありません。
・反応は独立しているものではない。
実際の反応は、予測と判断に密接に関係しています。
反応をするタイミングを相手のスイング中のどこに対して行なうのかは選ぶことができます。
例えば、相手がボールを打つ直前に相手のラケットセットの場所からそのショットを予測できて、そのショットを判断できたとすれば、相手の打点を待たず、それに対して反応しても良いわけです。
しかし、なかなか予測ができずに判断がつかなければ、実際にショットが打たれてから判断することになりますから当然反応も遅れてしまいます。
そして、予測していたショットと違うショットが飛んできた場合なども判断の訂正を余儀なくされますから、反応もその分遅れるでしょう。
しかし、予測ができなかったとしても、いわゆる山勘で相手からの仮想のショットを想定し、それに対して反応しても良いわけで、ポーチボレーなどはこれに当てはまるかもしれません。
・判断のタイミングを早くすること
判断のタイミングを早くすることが、判断を必要とする場面での反応のタイミングを早くするためには不可欠です。
0.1秒の判断の遅れが致命的になる可能性があります。
そして、そのためには予測が的確にできるようになること、また、いつまでも悩むことなくさっさと判断してしまうことが大切です。
・反射的な動きの精度を上げることが大切だ
そして、より多くの場面で、自動的に反応できるように訓練をすることも大切です。
これは、熟練することで大脳を通さずに反応することにつながります。
守備力の向上のためには絶対的に必要な条件です。
そして、これは経験と訓練によってのみ向上するものです。
”感じて動く”ことができるようになるまで反応の訓練を積まなければいけません。
車の運転などでは、人は危険を認知して、判断して、操作をするまでにおよそ1秒かかるといわれています。
これをテニスに置き換えてみれば、反応のために1秒の時間をかけているようでは、もちろん相手のボールが速ければ触ることすらできないでしょう。
プロ選手がエースを狙って打ってくるボールのスピードは時速150kmと言われています。
これは1秒で40m程進むことになります。
もちろん、前述のように空気抵抗などがありますから、単純にこの数値通りとはいきませんが、縦の長さ約24mのテニスコートを守るためには、1秒の反応速度では不可能です。
しかし、テニスの場合でも、予測が適正に行なわれ、その動作に熟練してくることで反応時間を短縮することは可能です。
これは、日頃の練習中から、一球ごとに予測をしてから行動する習慣を身につけることと、緊張感を持ってすばやく反応する訓練を怠らないことが大切です。
日々の積み重ねが相手のショットに対応する力を養ってくれます。
次回は、”相手のショットに対応する力”を向上させるために必要な、”スタート”について説明をしたいと思います。
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相手のショットに対応する「判断」 [守備力の向上]
これまでに説明をしてきたように、テニスの試合での守備力を向上させるためには、第一に”相手のショットを予測する力”を高めることが大切です。
しかし、いくら予測が上手にできるようになったとしても、その後の相手のショットに対しての対応が上手くいかなければ、当然のことながら守備力の向上は望めません。
従って、さらに守備力を向上させるためには、”相手のショットに対応する力”を高めることが必要になってきます。
この”相手のショットに対応する力”を項目に分けて考えてみると、下記のようになります。
・判断
・反応
・スタート
・フットワーク
”相手のショットに対応する力”を高めるということは、上記のそれぞれについて向上するということです。
そこで、今回からは、”相手のショットに対応する力”を向上させるために必要な上記の4つの項目について説明をしていきたいと思います。
まず、今回の説明は、”判断”についてです。
この判断というものは、実際に相手がショットを打った瞬間から始めるものです。
相手がショットを打つ直前までに予測が終わり、相手がボールをラケットで捕らえた瞬間から判断が始まるということになります。
もちろん、予測に関しては、相手のショットが打たれる前に行なうわけですから、当然外れてしまうこともありえます。
これを、確率良く当てられるようになるためには、前回までに説明してきたような多くのデータを用いて、そこまで積み重ねてきた経験を余すことなく活用して行なう必要があります。
これには、多くの経験を積むことで知りえたデータを統計的に整理して頭に入れて置くことや、相手の僅かな違いを見抜く観察眼を養っていくことが重要です。
故に、予測の力は多くの場合レベル差に関係してくるものです。
しかし、判断に関しては、実際に相手のショットを見て行なうものですから、当たり外れのあるものではないと考えられます。
ところが、通常この判断というものは、相手がショットを打った瞬間から始まり、自分がそのボールを打つ直前まで何度も行なわれるものです。
しかも、この判断には、常に予測の要素も含まれています。
従って、この判断についても当たり外れは当然あります。
見たままを判断するのだからレベル差に関係が無いのかといえば、そうではないのです。
それでは、具体的にどのような手順で判断がなされて行くのかの例をあげてみます。
まず、相手のラケットがボールに対してどの程度のスピードで接触したのかを見ることで、およその相手のショットのスピードを判断します。
次に、そのラケットがボールに対して接触してくる軌道と振りぬかれる軌道からショットの球種を判断します。
(これは、例えば、ボールに対して下方から接触し、上方へ振り抜かれたのであれば、トップスピンであり、
逆であれば、スライスであるというように)
また、相手のラケットからボールが離れていく軌道を確認して、その方向と高さを判断します。
ここまでは、予測の要素はなく、実際に目で見たままの判断ですが、この後にそのボールがどこにどの程度のスピードでどのような軌道で到達するのか、または、どのようなバウンドをするのかをここで見た情報をもとに予測する必要があります。
そして、実際の打ち出されたボールを見ながら、難しい判断を迫られるような場合であれば、そのボールを打ち返す直前までさらに判断を修正しながら繰り返し、そのボールに対する位置取りや、スイングの軌道、タイミングを調整していきます。
これだけを考えれば、予測の要素も含まれてはいますが、現実に起こっていることを見て判断に修正を加えながら対応しているだけです。
従って、予測が多少間違ったとしても判断の力に差が出るようには思えないところですが、この判断で大きな問題になるところは、その判断の速さと予測を含めた正確さです。
この点が、選手のレベルに大きく関係してくるところだと思います。
まず、速さというのは、相手の打点からボールが離れて何センチ移動したところで判断ができたのかということです。
この判断がなされた時のボールの位置が相手の打点に近ければ近いほど、有利になることはわかりやすいところだと思います。
これは、動体視力にも関係してくるところだと思いますが、相手の打点を注視し、なるべく早い段階で判断できるように訓練をしなくてはいけません。
次に予測を含めた正確さについてですが、良い選手は、相手によって打たれたボールが到達されるだろう場所へ先回りをして位置を取ります。
これは、相手の打点からボールが離れた瞬間から始まった判断が早い段階で終了したことを意味します。
当然理想的なスイングをボールの後ろに作るためにはそのための時間が必要になります。
いつまでも相手の打ったボールとともに動いているようでは、その時間を作ることができません。
従って、判断が終わらずにいつまでも自分の位置が定まらないようであれば、満足の行くスイングを作ることができないということになります。
もちろん、その判断が不正確なものであればいくら早い段階で判断が終了したとしても、ショットを打つ段階になって、フォームを崩す危険は否めません。
故に、これについても、相当の経験と訓練を積み重ねる必要があるということです。
判断の力を向上させるためには、できる限り早い段階で判断を始め、できる限り早い段階で判断を終わらせて、しかもその判断が正確であるようにそのための訓練を意識して行なうことが大切です。
これは、こういった意識を持って、すべての練習に取り組んでいれば、確実に向上していくものです。
常に相手のボールが到達するだろう場所へ、先回りをしてからショットを打つことができるように、相手がショットを打った瞬間にそのボールがどこにどのような軌道どの程度のスピードでバウンドするのか、また、バウンドの軌道や回転による変化はどうなりそうかを判断する習慣を身につけなくてはいけません。
この訓練が積み重なることで、判断の力は必ず向上するはずです。
次回は反応について説明をします。
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相手のショットを予測する「相手がボールを打つときの相手の身体の向きとステップ」 [守備力の向上]
今回は”相手がボールを打つときの相手の身体の向きとステップ”のデータを利用して相手のショットを予測をすることについて説明をします。
相手の身体がどこに向いているかとか、相手がどの方向にステップをとったとかは、最も観察していて判りやすい部分だと思います。
従って、このデータを用いた予測自体は決して難しいものではないのですが、残念ながらその予測が当たるかどうかの確率は相手次第です。
なぜならば、相手が相手自身のショットを隠そうとする場合には、自身の身体の向きと、ステップの方向や場所については当然工夫をしてくると考えられるからです。
実際のところは最もミスリードをさせられやすい、簡単に信用してはいけないデータであるともいえます。
特に相手に余裕があるときは注意をしなくてはいけません。
いわゆる間違った予測をさせるように仕掛けてくる可能性が高いということです。
従って、相手の技術レベルが高ければ、多くの場面で意味を成さないデータということになりますが、大切なことは、すぐにこのデータを利用することを諦めてしまうのではなく、いろいろなボールに対して、何回も相手の身体の向きやステップの取り方を観察し、ひとつのショットについて、何か共通点が無いのかを探索することです。
このショットを打ってくるときには、決まってこうしているなどの情報を見つけることができれば、その後のポイントで有利になれる可能性は高まるはずです。
また、場合によっては、相手がショットを隠そうとするその仕草に不自然さを認めることができるようなこともあります。
その動きが、敢て予測を間違えさせようと考えられて行なわれているものだと見抜くことができれば、これも、相手のショットを予測をする上で有効な情報となり得ます。
もちろん、相手に余裕が無い場合や、相手がショットを隠すことに意識が向いていない場合などは、このデータにも十分に利用価値があります。
そして、このデータを用いて予測をする際に基礎となる考え方は、前回にも説明をした、順クロス、逆クロス、ストレートの各コースにショットを打つとしたら、それぞれボールの外側、内側、真後ろを打つ必要があるということです。
相手の身体の開き方や、ステップを取る位置によって相手がボールのどこを打とうとしているのかを判断することで、相手のショットを予測することが可能になります。
このデータは相手のショットを予測する上で、基本中の基本といってよいでしょう。
前述したように、いかなるときも信頼できるデータとは言えませんが、例えば相手のステップの際の爪先の開き具合の違いなど細かいところまで観察することができれば、相手が隠し切れていない部分が見つかるかもしれません。
予測の能力を高めるためには、こういった正確な観察眼を持つということも非常に大切なことです。
この他のそれぞれの項目についてもそうなのですが、判りにくいからといってすぐに諦めることなく、何度もそのデータを用いた予測にチャレンジをし続けることが大切です。
そのような経験を積み重ねていくうちに予測の能力が高くなり、守備力の向上につながるものだと思います。
次回は”相手のラケットがボールに対してどこから出てくるか(フォアードスイングの軌道)”のデータについて説明したいと思います。
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相手のショットを予測する「相手のラケットのセット場所」 [守備力の向上]
今回は、相手がショットを打つ直前のタイミングで、”相手のラケットのセット場所”から相手のショットを予測することについて説明したいと思います。
この”ラケットのセット場所”というのは、相手の身体に対してのテークバックの位置を指しているのではありません。
相手のラケットが、打点の直前でボールに対してどこにあるのかということです。
もちろん、あなたの打ったボールに対して、相手のテークバックがどこに取られているかといったデータも、相手のショットの予測をする上である程度は利用することができますが、相手が相手自身のショットを隠すことに意識を持っているとすれば、テークバックでの違いを見られないように工夫しているはずです。
前回の”相手の位置取りによって相手のショットを予測する”のなかで、順クロス、逆クロス、ストレートの各コースにショットを打つとしたら、それぞれボールの外側、内側、真後ろを打つ必要があると説明しました。
このことは基本的なことではありますが、コースに変化をつけるためには必ずしなくてはならないことです。
従って、相手がテークバックで予測をされないように工夫をしているとしても、打点の直前でのラケットセットの位置は隠しようがありません。
そこで、このときに相手のラケットがセットされた位置から、相手がボールのどこにラケットを合わせようとしているのかを予測することが、”相手のラケットのセット場所”から相手のショットを予測するということになります。
多くの場合、相手がフォアードスイングを開始するときには、そのショットをどこにどのようなボールで打とうか決めているはずです。
故に、相手はフォアードスイング中にそのショットに応じた位置にラケットをセットしに行くことになります。
この時に、ラケットフェイスがボールの外側にセットされるようであれば、順クロス系のショットを狙っている可能性が高くなります。
また、ラケットフェイスがボールの内側にセットされるようであれば、逆クロス系のショットが来る可能性を疑うべきです。
もちろん、ボールの真後ろにセットしているのであれば、ストレートを予測します。
このデータを利用して予測をする際に大切なことは、相手が順クロスに打つときと逆クロスやストレートに打つときとで、ラケットフェイスをセットする位置の違いがスイング中のどの段階で行なわれるのかを観察することです。
もしも、テークバック時などの早い段階で違いを見つけるようなことができれば、この段階で予測ができてしまうわけですから、相手のショットに対して多くの時間的余裕を得ることができます。
また、テークバックでは判断できないとしても、それぞれのコースに対して何かしらの決まった特徴を見つけることができれば、そのデータはその後のポイントで大いに役立ちます。
しかし、相手のテークバックの位置が各コースに対して違いが無く、スイングの速度が極端に速いような場合は、このデータで予測をすることは難しいかもしれません。
何度も繰り返すようですが、予測をするためのデータは他にもあります。
ひとつのデータだけに頼らずに、多くのデータを組み合わせ検証し、より予測を確実なものに近づけるようにしなくてはいけません。
次回は”相手がボールを打つときの相手の身体の向きとステップ”のデータについて説明したいと思います。
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相手のショットを予測する「自分のショットに対する相手の位置取り」 [守備力の向上]
テニスの試合の中で、相手のショットを予測するタイミングは3回あります。
この中で一番早い段階で行われる予測は、自分がショットを打つ(選択する)前です。
この時には、これから打つ自分のショットを選択するために、ここにこういうボールでショットを打ったらおそらくここに打って来るのではないかというように予測します。
その結果、ここに打つと自分が不利になるとか、有利になれそうとかの判断をし、その場面で最も有効なショットを選択します。
そして、次のタイミングは自分がそのショットを打った直後です。
通常は、ショットを打った直後の感触で、そのボールが狙い通りに行ったのかそうでないかが判断できると思います。
そのボールが狙い通りのものであれば、ここで予測をし直す必要は無いと思います。
しかし、場合によっては、狙い通りのボールが行かないこともあるでしょう。
そのようなことであれば、自分が打ったそのショットがどこにどのようなボールとなって到達するのかを判断し、それに対する相手のショットを予測し直す必要があります。
上記の二つの予測は、前回までに説明をした
・相手がコートのどこから打ってくるか。
・自分がコートのどこにいるか。
・相手のコースや球種に対する得意不得意
・相手の配球のくせ
・セオリー
これらのデータを基に予測することになります。
そして、予測を行なう最後のタイミングは、相手がショットを打つ直前です。
予測をするためのデータは多いほうがより良い結果を導ける可能性が高まります。
それまでの予測をより確実なものにするため、また場合によっては変更するために行ないます。
そこで今回からは、相手がショットを打つ直前のタイミングで、相手が打って来るショットを予測することについて説明をしたいと思います。
まず、今回は、”自分のショットに対する相手の位置取り”のデータを使って相手のショットを予測することについてです。
残念ながらこのデータは、相手に時間的、および技術的に余裕があるときにはあまり当てにならないデータです。
なぜかといえば、相手のショットに対してどこへでも打つことができる位置取りというものが存在します。
当然のことですが、相手に簡単に自分のショットを予測されてしまうようでは、試合に勝つことは難しくなりますから、どのようなショットを打つのかを隠すことは非常に重要な技術です。
そこで、”ボールに対する位置取り”によって相手にショットの予測をされないように、これについては選手であれば何度も繰り返し練習をしているものです。
その結果、多くの選手がある程度自分のショットを隠すことができるようになっています。
しかし、相手に余裕がないときには、考慮するべきデータといって良いでしょう。
また、基本的には余裕がなくなればなくなるほど、信頼できるデータになるのですが、相手の予測を欺くために、敢て余裕のない振りをしてみたり、ある特定のコースに打ちそうな位置取りを相手に見せてみたりといった行動がとられやすいのもこのデータの特徴です。
従って、ある程度は予測のために活用しますが、完全には信用しないことが大切です。
試合開始後、しばらくの間相手を観察し、ほぼ間違いなくこのデータによって相手のショットが予測できたのであれば、大切なポイントを除いては信頼しても良いかも知れません。
前述しましたが、この”ショットに対する位置取り”は相手を欺くために利用されることが多いので、場合によっては、相手が大切なポイントを取得するために、敢て判りやすい位置取りを見せて、布石を置いているということかも知れませんから注意して下さい。
以下に具体的な予測方法についての説明を示したいと思います。
これは、相手のフォームによっても多少の違いがあり、一概に言い切れない部分もありますから一般論として捉えて下さい。
まず、打つコースによっての基本的な打点の位置の違いについてですが、順クロス系が横方向に関しては最も身体に近く、前後の位置としては最も前方になります。
そして、この打点の位置はストレート方向、逆クロス方向という順番で横方向に遠ざかり、前後についてはこの順番で後方になって行きます。
また、言い方を変えると、順クロス系のショットは、打点を前方にしてボールの外側を打つためにボールの外側へ位置をとり、逆クロス系のショットはボールの内側を打つためにボールの内側に入り込むように位置取りをし、ストレート系のショットはボールの真後ろを打つために、その中間の位置取りになると言うことができます。
従って、この横方向の位置取りを観察することで、相手のショットが予測できるということです。
これについては、フォームよりもタッチでコントロールをしてくる選手に対しては大変予測し辛いですが、まじめに正確な位置取りをし、フォームの乱れが少ないタイプの選手は予測しやすいと思います。
しかし、前述したとおり、相手のレベルが高い場合には何らかの仕掛けをしてきている可能性もあります。
こういった場合、このデータを鵜呑みにすることは非常に危険ですから、他のデータについての補足情報程度に考えていたほうが良いかも知れません。
次回は”相手のラケットのセット場所”のデータから相手のショットを予測することについて説明したいと思います。
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相手のショットを予測する「セオリー」 [守備力の向上]
今回は”セオリー”のデータを利用した予測について説明をしたいと思います。
当然のことですが、”セオリー”のデータを利用するためには、まず、”セオリー”を覚える必要があります。
しかし、このセオリーを覚えることが意外と大変なことであったりします。
まず、”セオリー”とは、”理論”を意味する言葉ですが、ストロークやボレーなどのフォームについても理論は存在しますし、フットワーク、ポジショニングなどについても理論が存在します。
そして、配球のセオリーは、これらの理論を踏まえた上で考えられているものです。
従って、テニス全体に関して言えば、到底数えることができないほどのセオリーが存在しています。
これらのすべてを熟知するためには、相当の経験と努力が必要です。
例えば、”配球に関するセオリー”は、攻撃の際のセオリーと、守備の際のセオリーに分けることができます。
そして、攻撃の際のセオリーは、ベースラインからのセオリーとネットプレーでのセオリーなどに分けられ、また、ベースラインからの攻撃のセオリーは、ストレートからの展開、クロスからの展開などに分けられ、また、ストレートからの展開であっても、相手のボールが深いときと、浅いときでは違いがあり、相手のボールのバウンドが高くなるときと低くなるときでも違います。
もちろん球種によっても違いがでてきますし、相手や自分のポジションによっても違いがあります。
また、グリップの握り方や、バックハンドがシングルハンドかダブルハンドか、相手の身長が高いか低いかなど数え上げれば限がありません。
このようなことが、守備をする際のセオリーにも当てはまるわけですから、”配球に関するセオリー”だけでも、いかに多くのセオリーが存在するか想像できると思います。
簡単にまとめれば、”配球に関するセオリー”とは、どのようにすれば試合に勝つ可能性を高められるのかを、それぞれの状況において確率と統計から導き出した配球の手筋のようなものです。
テニスの試合に勝つためには、第一にミスを減らさなくてはいけません。
従って、”配球に関するセオリー”の半分は、それぞれの場面でミスを減らすための理論です。
ここでいうミスというのは、ショットのネットやアウトなどのコントロールミスだけではなくて、位置取りのミス、配球のミスなども含まれます。
”ショットのミスを避けるためのセオリー”は、この場面でこのコースにこういった球種で打つと、ショットのミスを犯しやすいなどの確率論から導かれたものです。
”位置取りのミスを避けるためのセオリー”は、この場面ではここで待っているべきだという”ウェイティングポジション”を特定する理論であり、相手がショットを打つ際に自分のウェイティングポジションを最適な位置にするための、配球、フットワークを含めた理論です。
”配球のミスを避けるためのセオリー”は、この場面でそこにボールを打つと、自分が不利になる可能性を示しています。
また、テニスの試合に勝つためには、ただ単にミスをしなければ良いわけではありません。
テニスは相手にミスをしてもらえなければ、決着がつかない競技です。
そこで、”配球に関するセオリー”の残り半分は、相手を不利にさせ、自分が有利になるための配球の選択についての理論ということになります。
何度も繰り返しますが、これらのすべてを含めてセオリーと考えることになりますから、実際のセオリーをすべて覚えるためには、相当の経験と学習が必要となります。
従って、通常、このセオリーのうちの幾つかであれば知っているという人は多いと思いますが、セオリーすべてについてよく理解をしている人は少ないと考るほうが普通です。
当然のことですが、”セオリー”のデータを利用して相手のショットを予測する条件としては、自分も相手もその場面での”セオリー”を知っている必要があります。
相手の配球が”くせ”によってやっているものなのか、”得意不得意”によるものなのか、”セオリー”によるものなのかの判断を正確にできないと大きく結果に関わってきます。
ここまでに説明をしてきた小項目の中で、”相手のコースや球種に対する得意不得意”や”相手の配球のくせ”のデータを利用した予測に関しては、相手の配球は、ただ単に相手がやりやすいようにやっているだけで、そこに理論は存在していませんから、”セオリー”のデータを用いた予測とはまるで違った種類のものです。
しかし、”相手がコートのどこから打ってくるか”や”自分がコートのどこにいるか”などの項目を利用した予測に関しては、相手は理論を基に配球をしてくるわけですから、これは”セオリー”に近いかもしれません。
”セオリー”のデータを利用した予測を確実にするためには、自分自身の経験と学習も必要ですが、相手のレベルにも注意を払わないといけません。
お互いに高いレベルでの試合ができるようになったときには、大変効果的な予測方法ですが、相手のレベルによっては、”相手のコースや球種に対する得意不得意”や”相手の配球のくせ”のデータを利用した予測のほうが確実であることもしばしばです。
試合においては、相手のセオリー熟知レベルの判断を間違えず、この方法だけに捉われず、必要に応じて他の方法に切り替えることを忘れないようにしてください。
最後にひとつだけ配球の手筋についてのセオリーをご紹介したいと思います。
まず、選手Aが、クロスに深く大きなバウンドをするショットを打ち、相手の選手Bを後方に下げます。
そのボールに対して選手Bがクロスに返球してきたら、次に、選手Aはクロスへ短い角度のついたショットを打ち、選手Bをベースラインの前方でサイドラインの外側に追い出します。
このボールに対して選手Bがクロスへ返球してきたのなら、選手Aは次の返球をストレートに速いタイミングで攻撃をします。
このボールに対して選手Bは斜め後ろへ下がりながら返球することになりますので、選手Bのショットは甘くなる可能性が出てきます。
そこで、選手Bの状況が十分でなければ、選手Aはネットへ詰めてその返球をボレーで仕留めます。
これは、選手Aがクロスに打った長短の2本のショットに対して選手Bがクロスに返球してくることが条件です。
選手Bが違ったコースにショットを打ってくれば、通常そこからはそのショットに応じたセオリーに変更されます。
また、選手Bが打ってきたボールが、選手Aが次のコースに打ち切れないようなショットであれば、この配球のセオリーは選手Bによって打破されたということになります。
ただ単に配球の順番だけを覚えることがセオリーを覚えることではありません。
この配球の手筋には、各ショットの順番にポイント取得のための理論があります。
選手Aがストレートにショットを打つ場合、選手Bが余裕を持って返球してこれるようであれば、選手Bはショートクロスへ角度のついたショットで攻撃してくる可能性があります。
このようであれば、選手Aはコートの端でストレートへのショットを打った後、選手Bが打つコートの外に逃げていくボールを追いかけなくてはいけなくなりますから、当然、攻撃したつもりが立場は逆転してしまいます。
そこで、通常は、ショートクロスのショットなどを先に打ち、選手Bをコートの外へ追い出してからストレートに打つことで、選手Bに十分な余裕を与えないようにしてこのような危険を回避します。
また、ショートクロスというショットは、短いボールです。
選手Aのこのボールに対して、選手Bが余裕を持って返球できるようであれば、このボールはただの浅いチャンスボールになってしまいます。
しかも選手Bはコートの端からショットを打ってきますから、スペシャルな角度をつけて打つことが可能です。
これが意味することは、選手Aが守らなくてはいけない範囲がクロス側に大きく広がるということです。
しかも、選手Bは選手Aのコートに対してほど近いところからショットを打ってくるわけですから選手Aには十分な時間がありません。
当然、守りきることは難しくなるでしょう。
このようなことを避けるためには、基本的にショートクロスへのショットは自分が有利になれるときに使うべきです。
そこで、選手Aはショートクロスのショットを打つ前に、選手Bを後方に下げるバウンドの大きな深いショットを打つ必要があるわけです。
そして、ストレートのショットの後にネットへ詰めるということは、ポイントを取れるチャンスを確実にものにするために非常に大切な行動です。
もしも選手Bがゆっくりとした深いボールで返球をしてきた場合に選手Aがベースラインで待っていたら、そのボールが選手Aのコートに到達するまでの間に、選手Bは最適なウェイティングポジションへ戻ってしまいます。
せっかく3本のショットを組み合わせて選手Bを崩しても、これでは再び最初からやり直しです。
だからといって、2本の長短のクロスのショットの後に慌ててネットに詰めたところで、選手Bが崩れていなければ切り返されるリスクがあります。
このようなことを考えると、この行動がポイントを取得するために、より確実性のある形であることが理解できると思います。
”セオリー”のデータを利用して相手のショットを予測するということは、以上のような配球の意味合いを良く理解して初めて成り立つものです。
”セオリー”による配球を正確に行なえるということは、相当の経験と学習が必要であることが理解できたことと思います。
今回までの説明は、自分がショットを打った直後に行なう”相手のショットに対する予測”についてでした。
次回以降は、これによる予測をより確実なものにするための、自分が打ったショットに対して、相手がショットを打つ直前に行なう予測方法を説明したいと思います。
まず、次回は”自分のショットに対する相手の位置取り”のデータを基に予測をすることについて説明したいと思います。
タグ:テニス上達